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みほー7 それぞれに甘い夢を見ていた! [みほ]

 ギター女子店員亜沙美さんによると、最近はエレキが不調で大手メーカーのギフソンとかが潰れたらしい。その代わり、シンガーソングライターブームと、昔、70年代あたりにフォークをやっていた人が、青春よ、もう一度、とやり始めたお陰で、アコーステックギターの売れ行きは好調らしい。

 「それにしてもギターってお高いのですね」

 蛙子が聞くと亜沙美さんさんは笑いながら、

 「ビンテージとかはね。でも新しいギターはメーカーさえ間違えなければいいのに当たるかも」

 「ふむ、やはり、当たり外れがあるのね。亜沙美さんさんお願いいたしますね」

 「それやめてよ、亜沙美さんって呼んでよ」

 「亜沙美さん、お頼みぃ!!」つい叫んでしまった。

 「さぁ、ここよ。ここはアイリの安いタイプが置いてあるの。まぁ、初めての人にはいいギターかなぁ。でもさっきも言った通り、当たり外れがあるから・・・そうね、色々、触って気に入ったの4本くらい選んでね。恋人を抱くように、優しくね」

 「恋人を抱くようにって、いないのにね。って、なんだかなぁ」

 「とりえず、蛙子はそっちから一列ね。私、こっち触ってみるから」

 「うん」

 私は色気がクリームぽい一本を抱きかかえてみた。弦はチューニングしていないから、鳴らない。とりあえず、抱いた感じは大きいかな。その次のはあの鳥の絵が描いてあるハミングボードモデルだ。少し小柄で、抱いた感じは悪くない。緩め忘れた一本の弦が「ぼーん」と鳴った。
世界に解き放れていくいくような感じがする。これかな。

 「みほ!それ?私はこれなんだけど」

 蛙子はかなり大きなギターを抱えてきた。

 「大きいけどなんか頼りがいがあるって感じよ」

 「ふーん。呼んでみようか、亜沙美さんのこと」

 亜沙美さんは接客が終わり、ちょうどカウンターに戻る所だった。

 「亜沙美さーん!」

 「あら、恋人は見つかったの?よしよし、この二本ね。じゃ、音合わせしてみようか?」

 亜沙美さんはなんか金属の棒みたいのを出すと自分の膝にぶつけ「パーン」とキレイな音を出した。

 「これ?これはギターの宝物。音叉っていうの。今はクリップチューナーとか機械で音程合わせるのが普通だけど、まずはこれでチューニングするのが、ギターに慣れるにはいいわよ」

 「Aの音ですね」

 「おっ、流石。なんか楽器しているの?」

 「えへ、ピアノ」

 「じゃぁ分かるわねぇ」

 (うっ、なんか悔しい。Aか。ドレミじゃないのか?)。

 「さぁ、二本ともチューニングしたわよ。今度は音出してみて。その丸い穴のあたりで指で弦を触ってみて」

 私はハミングボードを。蛙子は大きなのを抱いて、弦を弾いてみた。

 「ぽろーん」

 「ぼぼーん」

 これがギターかぁ。しかし、だいぶ音色が違うもんだ。ハミングボードは少し小さい音だが、高い音がよくする。大きな方はそれに比べてちから強い感じだ。今度はギターを取り換えて弾いてみる。

 「うん、蛙子はやはりこの大きな方かな、低音がよく響いてていい感じ。みほは?」

 「うーん。ハミングボードは繊細だけど確かに音が小さいかも」

 亜沙美さんさんは笑いながら、もう一本のギターを持ってきた。

 「はい、これは中古。同じアイリでもK.アイリの中古よ。元のお値段は10万円くらいかな。3年くらい使われて、この店にやってきたの。そんなに使っていなかったみたいでキレイでしょ。はじめてギターやるのに、中古はなぁ、って感じだろうけど、とにかく弾いてみて」

 K.アイリ中古は持った感じ、その丸みに優しさを感じた。使っていたものだからなのか、身体に馴染む。そっと弦を弾いてみると。ハミングボードとも大きいのとも違う音がした。

 「ダダーン」

 「ダダーン?」なんだろう?音が前の方に波のように出ていく。蛙子が弾いてもそんな感じ。高い方の弦もきちんと音が前に出ていく。

 「どう?ご感想は?」

 「私はこれ!音が力強いしはっきりと出てくるから好きだな」

 流石、蛙子。言うことが音楽ぽい。

 「あなたは?」

 私は迷っていた。そして、亜沙美さんさんに言う。

 「こっちの一回弾いていいですか?」

 そのギターは濃い土色をしているが細身な感じ、ちょっと気になっていたのだ。

 「さぁ、どうぞ」

 抱えた感じが、ニコニコ赤ちゃんのようで心が安らぐ。少し思い切り弾いてみた「カーン!」低音より高音がよく出ている。

 「うん、ここからは音楽の好みにもよるけど、ピックでジャンジャカ弾くなら、私のおすすめの方かな。このギターはある意味、アルペジオとかに向いている感じ。でも、弾き続けていると音も変わってくるから、後は相性ね。ちなみにカンボジア製よ」

 (中国じゃないんだ!なんだかほっとした)。蛙子も弾いてみる。

 「うん、悪くはない感じ」

 「・・・じゃぁ!こっちに決定!」

 「了解。亜沙美さんおすすめのは振られたか。しょうがないはね。でと、値札では1万8600円也だけど、どうせ音叉とかもないんでしょ。じゃあ、サービスしちゃおうかな、音叉と弦1セットにウチのお店で作った簡単な初心者用教則本、それにソフトケースも付けて、税込みで2万円でどうだっ!」

 資金は2万円だ。全部使ってしまうと、ご飯も食べれない。「1万9000円!」蛙子がねばる。

 「うーん、それじゃ、じゃんけんぽいっ!あっち向いて、ほいっ!」

 蛙子は思い切り左を向いた。亜沙美さんのさした方向は上。やったー!

 「しょうがない、まぁ、ギター女子が増えるのはいいことだし。ただし、今度ギター買う時もここに来てよ。30万の買ってね」

 亜沙美さんさんの笑顔で、緊張していたのがほどけた。ギターはSアイリのDAYというギターだ。ソフトケースに入れて肩に下げてもそんなに重くない。なんだかルンルン気分の蛙子と私は、スタンドショップでクレープを頼むと、大きな川を眺めながら、ほおばって、それぞれに甘い夢を見ていた!



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(写真はイメージです)。

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